今回はチェルシー×トッテナムの一戦について戦術分析レビューを書いていきます。前節、主将アスピリクエタのゴールでトゥヘル体制初勝利を飾ったチェルシー。対するは現在公式戦4試合未勝利の上に、大エースのケインを負傷で失っているトッテナム。勢いに乗り始めているトゥヘルと背水の陣を強いられているモウリーニョの名将対決となりました。
SCORE
#CHE1-0 #TOT
SCORER
ジョルジーニョ(チェルシー)
MATCH REVIEW
前節の振り返り
- マルコス・アロンソの復帰
- 3-5-2へのシステム変更によるマウントの躍動
- セサル・アスピリクエタの持ち上がりが減少
前節のバーンリー戦ではマルコス・アロンソが復帰し、左サイドからの攻撃の球種が増加傾向にあった。また、後半は3-5-2へシステム変更したことにより、メイソン・マウントがライン間で躍動。本領発揮といったパフォーマンスを披露した。
加えて、相手とのシステム上の相性により、セサル・アスピリクエタが持ち上がる頻度が減っていたのもポイントだ。
それらを踏まえて、今節で変わった部分に注目していきたい。
スタメン
チェルシーのシステムは前節の後半に用いた3-5-2。今までと少し違うのはオドイの位置だ。前節まではWBに入り、大外から突破力を活かした仕事をしていたが、今節は右のシャドーでの起用。トゥヘルとしては調子がいいから使いたいけど、トッテナム相手では守備の不安がある…ということでこの位置に起用したのではないか。
対するスパーズは前節の3-4-3から4-2-3-1にシステムを変更。メンバーもギャレス・ベイル、ジョー・ロドン、ダビンソン・サンチェスが外れ、代わりにセルジュ・オーリエ、カルロス・ヴィニシウス、エリック・ダイアーが起用されていた。
チェルシー保持時
チェルシーは3-5-2のまま高い位置を取り、3バック+2CHでビルドアップ隊を構成。ワイドレーンはWBを配置。2CFで2CBをピン留めしてOHのマウントがライン間をさまよう。ここまではバーンリー戦の後半と同様だ。
司令塔のシャットアウト
対するスパーズは4-2-3-1の形からRSHのベルフワインが内側に絞ってきてチェルシーのコントロールタワーの1人であるマテオ・コバチッチを抑える。もう一角のジョルジーニョもタンギ・ヌドンベレが抑え、ここの2人はほとんどマンマークを徹底。チェルシーとしてはパサーを封じられていたので前半、ボールに触れる機会は常時より限られていた。こうすることでチェルシーの司令塔2人からのビルドアップをシャットアウトしようというのがモウリーニョの考えだったと思われる。
また、スパーズのCHの2人のタスクはボールサイドの1枚がハーフスペースを封鎖し、残った1枚がライン間を漂うマウントを抑えるというもの。そのため、一時的に5バックのようになることもあった。
左右のCBに見出した勝機
前述した通りスパーズはチェルシーのCHを徹底的に封鎖してきていた。そのため、空いてくるのはSHの脇のスペース。ここを起点にチェルシーはスパーズの攻略を試みた。
RSHのベルフワインはかなり内側に絞ってほとんどマンマーク気味でコバチッチを抑える。その恩恵を受けるのはRCBのリュディガー。リュディガーが深い位置まで進出するとベルフワインも少し迷う様子を見せたがどちらにしろコバッチッチとリュディガーの2人で打開ができるので同じ。簡単に高い位置へ進出できた。
逆サイドもほとんど同じ。ソンはアスピリクエタ担当だが、深追いはしない。カウンターの威力を担保するために前残りすることが多かった。そのため、アスピリクエタもリュディガー同様に高い位置へボールを運ぶことができていた。
このSHの脇のスペースは、CB以外にもマウントやヴェルナーが降りてきたりコバチッチが開いたりして使うこともあった。
マウント躍動の理由
前述したようにスパーズのCHはハーフレーンを埋めるというタスクの関係上、ディフェンスラインに吸収されることが多かった。そのため、スパーズのライン間のフィルター役は1枚、下手するといない時さえあった。その恩恵を受けたマウントはライン間で自由に振る舞い躍動することができた。
先制点を挙げることにも成功し、前半の出来は良かったチェルシー。実際、SHの脇からアスピリクエタが侵攻することで1点目のきっかけを作ることもできていた。さらに、ここ2試合で作れた2つの攻撃パターンをどちらも作れていただろう。
ここまでの試合展開を踏まえ、両軍指揮官はどう動いたか。後半戦のレビューに移る。
モウリーニョの善後策
前半に先制点を許し、悠長に後ろで構えていることができなくなったスパーズ。モウリーニョは後半の頭から方針転換をし、スパーズは前からチェルシーを押し込めて高い位置でボールを奪いにきた。
スパーズは2種類のプレス型を用意していた。
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3バックに対してCF+SHでハメに行き、2CHの一枚をOHヌドンベレが抑え、もう一枚をCHの一枚が抑える。
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サイドに圧縮するときのプレス。ボールサイドのWBはボールサイドのCHが捕まえにいく。
要するに、ある程度後ろの強度が下がるのを覚悟しつつ、前からボールを奪いにいく姿勢を見せていた。当然、このことによって恩恵を受けたのはCHの2人とOHのマウントだ。前者に関しては前半は常時監視役がついてきていたが、後半では状況によってフリーになれる瞬間が増加。後者に関しては前半以上にライン間のフィルターが薄くなったため、後半はさらにボールを持つことができるようになった。
MOM PLAYER
メイソン・マウント
ライン間で前を向いてそこからのチャンスメイクでチェルシー攻撃陣を牽引。後半からはスパーズの戦術変更のアシストも受けてさらなる躍動を見せ、チームの勝利に貢献した。
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